印刷用のデータを作成する時に耳にするのが、「リッチブラック」と「スミベタ」という言葉です。
普段あまり使う言葉ではないので、何となく聞いたことはあっても詳しくは知らないという方が多いと思います。
リッチブラックとスミベタの違い
スミベタとは
印刷用のデータはCMYKカラーモードで製作しますが、CMYは0%、K(黒)の値のみを100%にしたものを指します。
つまり、シンプルに黒のみで黒を表現するのがスミベタです。
リッチブラックとは
リッチブラックはCMYK全ての色を使って、より深みのある表現をした黒を指します。
リッチブラックはCMYKの合計値が250%以下になるように作るのが基本です。
多くの印刷会社で推奨されている色の組み合わせは「CMYK:40% K:100%」ですが、印刷会社によって違いますので、データ作成の時には確認しておくといいでしょう。
ちなみに4色全て100%の値で作った黒を「4色ベタ」と呼びますが、使うインクが多くなればなるほど裏写りやインクが乾かないなどのトラブルに繋がりやすいので、4色ベタで作成されたデータは不備データ扱いになることもあります。
リッチブラックとスミベタの使い分け
スミベタもリッチブラックも黒であることには変わりありませんので、見ただけだとその違いに気付きにくいです。
先ほども書いた通り、見た目の違いとしてはリッチブラックの方が深みがあって濃く見えると思います。
では、実際に、どの様に使い分けていけば良いのかをご紹介いたします。
リッチブラックは広い面積が得意
リッチブラックには多色で表現しているからこそ気をつけなければならないことがあります。それは「見当ズレ」です。
CMYKのカラー印刷では大体の場合、それぞれの色を一色ずつ紙に印刷していきます。
用紙がズレたり紙の状態が変化したりすることで、次の色を刷る時、本来刷る位置とは少しズレた場所に刷られてしまう可能性があります。このズレを「見当ズレ」と呼びます。
細かいオブジェクトにリッチブラックを使って見当ズレが起きてしまうと、ピントがズレたかのようにぼやけた文字や線になってしまいます。
そのため、リッチブラックは細かいオブジェクトではなく、広い面積を塗りたい時に向いています。
スミベタは細かい文字、線が得意
スミベタの場合、その場所には一回しか色が乗らないので、次の色がズレてしまう心配がありません。しかし逆に、スミベタは広い範囲に対して使うのは向いていません。
その理由は先ほども紹介した「一回しか色が乗らない」ことに関係します。
何度か説明した通り、スミベタではK(黒)一色しか使わないので、インクは黒のみが乗せられます。
その時に紙の上に埃やゴミ、インクカスなどが乗っていると、その場所にインクが付着せずに白抜けした状態になってしまいます。このことを「ピンホール」と呼びます。
4色使うリッチブラックでは、例えKで色が乗らなくても他のインクが付着すれば白抜けにはならないので、ピンホールの心配も少ないのです。
そのため、スミベタはピンホールが起きにくい細かい文字や線に向いていると言えます。
まとめ
少しややこしくなったのでまとめると・・・
★スミベタは細かい文字や線に向いている!
白抜き(ピンホール)が発生しやすく、広範囲ベタは苦手;
★リッチブラック広範囲ベタに向いている!
見当ズレが起きやすく、細かい文字や線は苦手;
ということになります。
普段あまり気にせずに使っている”黒”ですが、印刷することを考えた時には意外にも気を使う色なのです。